INTERVIEW

バイオ・創薬部門 / 博士前期課程 2年

野田 凌太郎

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包括的な実習・研究で手に入れた広い視野

私がこの研究科に入学した理由は「人の健康」について、自分の専門分野以外にも視野を広げたいと思ったからです。ヘルスシステム統合科学研究科には医療機器・生命倫理・民族における医療の考え方など、「人の健康」に関わる多様な知識を得られるカリキュラムがあります。学部時代に「人の健康を支える仕事がしたい」と漠然と考えていた私は、この学科で様々な視点から人の健康について学ぶことで、自分が将来取り組みたいことが見つけられるのではないかと考え、入学を決めました。

私の考える本研究科の魅力は、研究を通して自分の専門性を磨きつつ、授業や実習を通して課題解決力やコミュニケーション力を養えるところです。これまでに工学・看護・薬学・文化人類学などを専攻する学生とのディスカッションを通して、課題を学ぶだけでなく解決方法を模索するところまで取り組んできました。多様なバックグラウンドの学生とディスカッションする際には、他分野の方でも理解できるように整理して自分の知識や考えを説明する機会がたくさんありました。私はこうしたコミュニケーションを繰り返す中で、自然と相手の立場になって考えることが増え、以前よりも柔軟に物事をとらえられるようになったと感じています。

私が入学前に気になっていたことは、研究と授業の両立が出来るのかということでした。先輩から講義のコマ数(授業数)が多いと聞いていたため、学部の時以上に力を入れていきたいと考えていた研究との両立が出来るのか少し心配でした。しかし、授業や病院実習を通して医療従事者・患者の方・他学部の学生や教員と話したことで、それぞれの立場での実体験も含めた医療の課題を知ることができ、自分の研究の意義をあらためて見つめなおすきっかけになっただけでなく、将来の進路を決める際にもとても役立ちました。時間配分に苦戦した時期もありましたが、それ以上に得られるものが多かったと思います。

特に病院実習における糖尿病患者の方の話は、本研究科での忘れられないエピソードで、社会に出てからも大切にしたい考え方が得られました。インスリンポンプは装着しておくだけで必要な時に自動でインスリンを摂取できる医療機器です。私はこの機器によって糖尿病患者さんの負担はかなり軽減されたのだと思っていました。しかし実際に使用した患者さんは「針が太くて装着に抵抗がある。また動いたときに装置が外れてインスリンが投与されず、非常に怖い思いをした。研究者の方には、新技術を発明した後もそれで満足せずに使用者の声を聴きながら改良を続けていって欲しい。」と話されていました。このことから、利用者の声を聴くことはものづくりに取り組むうえで本当に大切なことなのだとあらためて感じました。

このような研究活動や実習を通して、将来は食シーンにデジタル技術やバイオサイエンスを融合したフードテックに携わってみたいと考えています。食の分野にはヴィーガンなど食の多様性・医食同源・フードロスの削減など、新しいニーズや課題が沢山あると思います。例えば、留学先でヴィーガンの方と生活を共にした際、彼らが自分の食のスタイルを無理なく維持するためには、味も健康面もまだまだ既存の食品には改善の余地があると感じました。私はヘルスシステム統合科学研究科で他分野の人と協力して課題解決に取り組んだ経験を活かして、食と異分野を融合させることで、食のシーンの様々なニーズを満たせるようなアイデアの企画に将来取り組んでみたいです。

現在の研究テーマについて

所属する研究チームは、簡便な抗体医薬品の開発ツールの作製を目指して研究を行っています。中でも私は、抗体医薬品を開発するためのスクリーニング技術への応用を目指して、免疫細胞内のシグナル伝達機構の解明に取り組んでいます。免疫系は感染から体を守るシステムのことで、このシステムにおいて中心的な役割を担う分子の1つが抗体です。私は大学の講義で体内における抗体産生メカニズムを学び、そのシステムの綿密さに大変興味を持ちました。そこでこの綿密なメカニズムを模倣し、試験管内での抗体作製に取り組んでいた今の研究チームで研究をしたいと思いました。最初は与えられた課題に取り組むことで精いっぱいでしたが、大学院に進学してからは指導教官や先輩の力も借りながら、研究テーマの立ち上げ・計画立案と検証・学会や論文投稿などに主体的に取り組むことができ、3年間の研究を通して自分の成長を感じました。

これから入学を考えている方々へのメッセージ

この研究科は「人の健康を支えたい」「新しいものやサービスを生み出したい」という方に特にマッチした学びの場だと思います。同じ「人の健康」に関わりたいという想いを抱く様々なバックグラウンドを持った仲間から受ける刺激はこの学科ならではのものだと思います。また、病院実習などを通して、「人の健康」という大きな領域の中から自分が将来本当に組みたいと思える分野を見つけ出すことが出来るのではないでしょうか。