一度現場で働いたからこそわかる研究の価値
私は本学の博士前期課程(修士課程)を修了後、製薬企業での3年間の勤務経験を経て、本研究科の博士後期課程(博士課程)に入学しました。就職前は博士後期課程(博士課程)に進学するか、企業に就職するか迷った時期もありましたが、実際の現場から「人々の健康に貢献したい」と思い、企業への就職を選びました。就職後は医薬品分析研究に携わり、医薬品開発の現場を知ると同時に、研究者として自分に足りないものが多くあることを痛感しました。そして、基礎に立ち返って科学的な考え方を学び、生物・タンパク質工学の知識や技術をより一層深めたいと思うようになりました。そんなとき、出身研究室の独自技術が実用化に向けて始動する話を聞き、このプロジェクトに携わりながら博士号を取得したいと思い、本研究科への入学を決意しました。
博士前期課程における魅力は、病院実習の講義が実施されていることです。本講義では、先進医療現場のスタッフから現場の課題を学ぶとともに、「患者・家族」や「医療機器」、「医療従事者」の様々な視点から課題について理解を深めることができ、研究活動へのさらなる可能性の探求につながります。 博士後期課程における魅力は、必須科目としてインターシップが組み込まれていることです。本学は一般社団法人産学協働イノベーション人材育成協議会の会員であり、企業交流会を経て研究型インターシップに参加できる環境が整っています。このため、博士号取得後に企業に就職するか、アカデミアに進むかを在学中に見極めることができます。
現在の研究テーマについて
がん免疫サイクルの活性化レベルを定量評価できる診断薬の研究に取り組んでいます。この研究は、がん治療における免疫チェックポイント阻害剤等での治療効果の有無などを予測し、患者さんごとの適切な治療方針を提供することに貢献できると想定され、魅力と大きなやりがいを感じています。さらに、現在は実用化に向けたプロジェクトが動いており、少しでも早く実用化につなげるためにチームの仲間と協業しながら実用化研究を進めています。
これから入学を考えている方々へのメッセージ
現在のところ本研究科には社会人コースはありませんが、博士後期課程においては、ほとんどの講義で担当教員が講義形式などを柔軟に対応してくださり、社会人でも業務と両立しながら講義を履修できる環境となっています。医工連携・文理融合を特徴とする本研究科では、医療系・人文社会科学系・工学系の幅広い分野の講義を履修することができ、それぞれの分野における視座・方法論等を学びながら専門性を高めたいと考えている方にはピッタリな学科だと思います。