研究科の特徴
対象は、「ヘルスシステム」の「現場」
この研究科の対象は、「ヘルスシステム」の「現場」です。つまり、病院での外来診療・入院診療を主体とした医療にとどまらず、在宅、介護、健康寿命延伸のための予防的医療、あるいは終末期の生き方を含めた、人間の生老病死にかかわる困難や課題を包括した対象を扱います。そこには、科学や研究がまだどのように取り扱えばよいか理解が進んでいない、理論どおりでない課題つまり「窮状(困りごと)」が日々生み出されています。この諸課題は、人間の更なる幸福実現のために、解決を待っています。この課題を次のステップに進ませるためには、現場の「窮状」に対する直観的な感知や、その言語化が、さらには言語化された内容に対して新しいアイディアとその証明が必要とされています。「アイディア」は、モノに限らず、考えも含みます。例えば具体的な新製品であっても、新制度や協働のしくみの考案であってもよいのです。それは工学を含む自然科学からも、人文社会科学からも出てくる可能性があるでしょう。こうした新しいアイディアを、信頼できる証拠に基づいて正確化していくのが、大学院で探求すべき研究・科学・学術の一つの大きな役割なのです。
この研究科の方法は、「統合科学」
課題解決の活動は、4群からなるサイクルで説明することができます(吉川弘之博士による)
- 自然・社会(現場)に対して、
- それを観察解析する学術を行う活動が対応し、
- その知見を応用してものづくりや新制度考案などアイディア創出を行い、
- その成果であるアイディアを応用して行動する活動が、また1自然・社会(現場)を相手にしていく(社会での活用)
このサイクルを通じて具現化されたアイディアが、自然界や人間社会に活用される状況を、「社会での活用」と呼びます。このサイクルが繰り返される間に淘汰が起こり、残ったものが自然や社会に対する人間の手段として定着していくはずです。このサイクルの回転をよくする人材が、より多く必要です。 本研究科は、そのような人材の育成を図るとともに、ヘルスシステムの現場に関係する多くの人や組織と協働して、現場の課題を探り、その解決に資するアイディアを創り出し、社会の中で活用していくことを目指しています。