繊細な問題に対してのアプローチを研究と活動の両方から行いたい
私はリプロダクティブヘルス・アンド・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を専門としており、学部生の頃から、学生や同世代の若者が性について知るためのワークショップを行うなどの活動をしてきました。ワークショップの実施にあたっては複数のヘルスケア関連企業から必要物品のご協賛をいただいたり、大学の学生相談室や保健管理センターのご協力をいただくなどしており、そういった信頼関係を保ちながら引き続き活動と勉学の両立をしたいという気持ちが強くありました。
学士論文では生涯学習、つまりは教育の観点から、若者が性について学ぶ意義やその機会の必要性を論じました。一方で、ワークショップのような教育的アプローチの弱みも感じており、イノベーションやブランディングといった手段を通して、人々が性というトピックに自然と触れられるような仕掛けを将来的に生み出したいと考え、入学に至りました。
ヘルスシステム統合科学研究科には、広く人々の健康に貢献したいという意志をもった教員や学生が集まっています。ヒューマンケアイノベーション部門所属で文系の私にとっては、医療系や理工系の色が強く感じられる部分もありますが、ウェルビーングの向上には多角的なアプローチが必要です。一言に健康と言ってもすそ野は広く、本研究科にはそれをキーワードに多様な専門性をもった人たちが研究に取り組んでいます。そういった人たちが身近にいる学生生活には、私たちの専門性や課題意識がきっと誰かの健康を支えるための力となる、そんな可能性を感じることができます。
現在の研究テーマについて
リバタリアニズム(自由市場・最小国家・社会的寛容を重んじる政治思想・政治哲学の立場)を足がかりに、人の身体の所有権と親密な誰かと共にある自由や選択について思案し、研究を進めています。性というテーマは非常に繊細で、このテーマに向き合うということは、人々のデリケートな価値観に触れながら揺さぶりをかけていくことになります。そこで、思想や心理などを織り交ぜた私の言説がセクシャルウェルビーングの価値を示すための糧となることを信じ、この研究に取り組んでいます。
これから入学を考えている方々へのメッセージ
大学院進学にあたって、それぞれに事情やモチベーション、今後の展望などがあると思いますが、研究やプライベート、進路選択などにおいて、「自分が思ってたのと違った」と思うことがあるかもしれません。そんな時に「これもありだな」と思える柔軟さを持ちながら、共に探求し、研究していきましょう。どこかの誰かのウェルビーングのためには、私たちがヘルシーに勉学に励むことも大切だと私は思っています。また、人生のうちの数年間、アカデミアに腰を据えられることは貴重です。教員や学生とのつながりを最大限に活用し、学び合いましょう。