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2022.05.27

<プレスリリース>がんと免疫の戦歴と戦況を評価する技術が実用化に近づく~網羅的な自己抗体バイオマーカー測定の定量性を保証するシステムを構築~

◆発表のポイント

  • ・がんと免疫の戦いの履歴と活動レベルを、末梢血中のがん抗原・自己抗体バイオマーカーで定量的に評価する技術を完成させました。
  • ・自家製陽性コントロール抗体の整備により、定量性の保証が可能になりました。
  • ・がん免疫治療が奏功した例では、腫瘍退縮に先立ってがん免疫サイクルが活性化することが確認されました。

岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(工)の二見淳一郎教授と、同大学院ヘルスシステム統合科学研究科博士後期課程の宮本愛大学院生は、不安定で凝集しやすいがん抗原や自己抗原タンパク質を独自に開発した可逆的S-カチオン化法で可溶化し、末梢血中の自己抗体を網羅的に定量評価するとともに、その測定データを保証するための自家製陽性コントロール抗体を整備する一連のシステムを完成させました。測定原理は2015年に開発済みでありましたが、臨床で実用化するためには信頼性を保証するバリデーションキットが必要です。本キットの完成で診断薬としての実用化に近づきました。さらに、がん免疫治療が奏功した例で血清中の自己検体を評価すると、腫瘍退縮が観察される時期よりもかなり早くがん免疫サイクルが活性化して自己抗体が上昇してくる様子が評価されました。がん免疫治療は個人差が大きいことが問題となっていますが、本診断薬を活用すると、がんと免疫の戦いが再開された狼煙を末梢血で鋭敏に評価できる可能性があります。
本研究成果は、2022年5月4日に「Frontiers in Oncology」 誌に掲載されました。

宮本大学院生(左) 二見教授(右)

◆研究者からひとこと

がん治療において注目されているがん免疫療法ですが、治療効果には個人差が大きいという課題があります。我々が開発中のシステムを用いることで、治療効果を早期に予測できると考えています。このシステムの臨床での実用化を目指し、さらに研究を進めていきたいと思います。

■論文情報
論 文 名:Engineering cancer/testis antigens with reversible S-cationization to evaluate antigen spreading
掲 載 紙:Frontiers in Oncology 12:869393 (2022)
著  者:Ai Miyamoto, Tomoko Honjo, Mirei Masui, Rie Kinoshita, Hiromi Kumon, Kazuhiro Kakimi, Junichiro Futami
D O I:https://doi.org/10.3389/fonc.2022.869393
U R L:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fonc.2022.869393/full

■研究資金
本研究は、JST大学発新産業創出プログラム(START)(JPMJST1918)および特別電源所在県科学技術振興事業補助金(岡山県)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
がんと免疫の戦歴と戦況を評価する技術が実用化に近づく~網羅的な自己抗体バイオマーカー測定の定量性を保証するシステムを構築~[PDF]

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域
(工学部 化学・生命系)
教授 二見 淳一郎
(電話番号)086-251-8217